放射線科の看護師体験

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放射線科の患者さんとの思い出

看護師になって初めて勤めたのは研修先となった都会のある大学病院でした。
そこは循環器内科と放射線科の混合病棟で放射線科の病室は病棟の端にありました。
放射線科の入院患者さまはほとんどが悪性腫瘍の方で放射線治療をされていました。
たまに検査入院などで短期で退院される患者様もいらっしゃいましたが、大半は長期入院の患者様でした。
そんな入院患者様の中に忘れられない患者さまがいらっしゃいました。
そこは女性の6人部屋で、3人の患者さまが横並びのベッドにいらっしゃっていつも楽しげにお話されていました。
「私達、三羽カラスなのよ」とよく冗談を言って笑わせてくださいました。
検査入院などで同室になった患者様からは
「検査が不安で入院が嫌だったんだけど、同室の方がとても楽しい方達でとても良かったです」と喜ばれていました。
3人の口癖は「笑う門には福来る」。
笑いのパワーには免疫力をアップさせる効能があると知ったのは、もう少し後の話になるのですけど。
看護師になったばかりの私には癌患者様にどう対応すれば良いのか、判らない事だらけで放射線科の病室は入るだけでも緊張していたのですけど、このお部屋に入るのだけは楽しみでした。
ある日、いつものように爆笑のうちに検温が終わり、病室を出ようとした時、一番年長の方がふと「私達、能天気に見える?これからの自分を考えたら辛すぎて、こんな風におちゃらけてないとやってられないって事もあるのよ。判ってくれると嬉しいんだけど」
凄くびっくりして胸が痛くなりました。自分は無意識のうちに失礼な事を言って傷つけてしまったのではないかと。彼女は笑って「貴方がどうという話では無いの。気にしないで」
研修期間はあっという間に過ぎて地元に帰る事になったのですが、その後、3人は相次いで亡くなられたと聞いて、不思議な気持ちになりました。
3人が癌患者様という事は知っていましたが、3人のあまりにも明るく楽しげな様子ばかりを見ていたので3人と死が結び付かなかった気がします。

現在では癌患者様も通院治療を受ける事が可能になって、以前のように長期に入院という場面は少なくなったかもしれません。それぞれのお宅で自分らしく最期を迎えられる環境は素晴らしい事ですし、私がそうなったら自宅でできるだけ過ごしたいと思うと思います。
でも、あの時のように患者同志でお互いに支え合える環境も良いところがあったような気もしますし、笑顔を忘れないように頑張っていた彼女たちは凄く強かったと思います。
彼女たちの笑顔は今も心に残っています。